既にあちこちのブログやSNSで解説が出ている様だが、私自身の備忘録もかねて記事に纏めておきたい。
Communication No. 2560: ICE DANCE Requirements for Technical Rules season 2023/24
下線が引かれている箇所が今シーズンからの変更点になる。2022-2023シーズンの課題はこちら。
来季のRDの指定音楽はシニア、ジュニア共に“Music and Feeling of the Eighties”、つまり「1980年代の音楽とフィーリング」。とは言っても、1980年代の印象なんて人それぞれなんじゃないだろうか?
ちなみにMTVが本国アメリカで放送を開始したのは1981年で、最初に流れた曲はThe Bugglesの「Video Killed the Radio Star」だった。MTVの登場を機に、アーティスト達はサウンドだけではなくビジュアルアピールも(時としてサウンドよりもジュアルアピールを)要求されるようになる。放送開始当時は白人による音楽が中心で黒人の音楽が流れることはほとんどなく、それに不満を持ったDavid BowieがVJに苦言を呈したのは有名な話(フルインタビューはこちら)。
そのBowieが高く評価した黒人アーティストの一人がつい先日(5月24日)亡くなったTina Turnerだった。
Tina Turner - What's Love Got to Do with It (1984)
ISUが1980年代の音楽を選択したのは今80年代リバイバルが流行っているからとも言われているが、本当の名曲とは時代を超えて普遍的な魅力を持つものではないだろうか。
Netflixのテレビドラマ「Stranger Things」がきっかけで、昨年Kate Bushの「Running Up That Hill」が世界中で大ヒットし、Bushの本国イギリスのBBCも嬉々として報じていたが(同曲は2012年ロンドン夏季五輪の閉会式で使用された)、彼女はいずれのムーブメントにも属せず当時は時代の遥か先を走っていたので、むしろ40年近く経ってやっと時代が彼女に追いついたという感がある。
Kate Bush - Running Up That Hill (1985)
今季Deniss Vasiljevs選手がSPに使用したStingの「Englishman In New York」は、LGBTQ+アイコンQuentin Crispに捧げた曲で、優しいジャズのサウンドに乗せた「Be yourself no matter what they say(人々が何を言おうとあなたはあなたらしくいてほしい)」という歌詞は遥かに時代の先を行っていた。
今季Deniss Vasiljevs選手がSPに使用したStingの「Englishman In New York」は、LGBTQ+アイコンQuentin Crispに捧げた曲で、優しいジャズのサウンドに乗せた「Be yourself no matter what they say(人々が何を言おうとあなたはあなたらしくいてほしい)」という歌詞は遥かに時代の先を行っていた。
Sting - Englishman In New York (1987)
一口に1980年代の音楽といっても本当に多様で例を挙げ始めたらきりがないし、実際に選手達がどんなタイプの曲を選ぶかわからないので、音楽の話はここまでにしておこう。
来季もシニアのRDにPDはなく、レベルなしの Choreographic Rhythm Sequence (ChRS)とレベルありのPattern Dance Type Step Sequence (PSt)がその代わりになる。
ChRSはPDのSilver Samba(SS、全49ステップでリンクを1周する)の#9 ~47をテンプレートとし、テンポは100 bpm以上。男性・女性の少なくともどちらか一人はSSをそのまま滑るが、男女のパートは入替可。残る一人はSSをそのまま滑ってもいいし、オリジナルのステップを滑ってもいい。ChRSはコレオグラフィックエレメンツなのでキーポイントはなし。
来季のPStは今季同様Style Dで、4つの「難しいターン」は、Back Entry Rocker、Counter、Bracket、Forward Outside Mohawk、うち2つを男性が2つを女性が行う(全部認定されるとレベル4)。テンポの指定はなし。
一口に1980年代の音楽といっても本当に多様で例を挙げ始めたらきりがないし、実際に選手達がどんなタイプの曲を選ぶかわからないので、音楽の話はここまでにしておこう。
ジュニアのRDのPattern Dance (PD)はRocker Foxtrot(RF、全14ステップでリンクを半周)で、テンポは104 +/-2 bpm(1分間に104±2拍)。1つのプログラムでRFを2回滑るが、RF1では従来通り男性は男性のパートを女性は女性のパートを滑り、RF2では男性が女性のパートを女性が男性のパートを滑る。キーポイントについてはまた後日記事を書くつもりでいる。
00:39あたりから1回目、00:56あたりから2回目。
来季もシニアのRDにPDはなく、レベルなしの Choreographic Rhythm Sequence (ChRS)とレベルありのPattern Dance Type Step Sequence (PSt)がその代わりになる。
ChRSはPDのSilver Samba(SS、全49ステップでリンクを1周する)の#9 ~47をテンプレートとし、テンポは100 bpm以上。男性・女性の少なくともどちらか一人はSSをそのまま滑るが、男女のパートは入替可。残る一人はSSをそのまま滑ってもいいし、オリジナルのステップを滑ってもいい。ChRSはコレオグラフィックエレメンツなのでキーポイントはなし。
Silver Sambaは2014-2015シーズンのジュニアのSDの課題だったので、現在シニアの選手の中には経験者もいるだろう。テンポが早くパターンがあまり蛇行しないので、30秒くらいでリンクを一周する。
Rachel PARSONS & Michael PARSONS (USA) SD @ World Junior Championships 2015
Music: Rhumba: Fruta Fresca (Club remix) by Carlos Vives
Samba: Heart of the Wind by Robert Tree Cody
1:53~2:22が一周目、2:37~3:05が二周目。
この2015年の世界ジュニア選手権は、昨季四大陸選手権と世界ジュニア選手権の開催を引き受けてくれたエストニアのタリン開催だった(会場も同じ)。更にアイスダンスで銅メダルを獲得したのはウクライナのOleksandra (Alexandra) Nazarova & Maxim Nikitin組だった(昨年8月に引退)。幸いCOVID-19のパンデミックは収束したが、ロシアがウクライナに侵攻して始まった戦争はしばらく終わりそうにない。とんでもない世の中になってしまったものだ。
来季のPStは今季同様Style Dで、4つの「難しいターン」は、Back Entry Rocker、Counter、Bracket、Forward Outside Mohawk、うち2つを男性が2つを女性が行う(全部認定されるとレベル4)。テンポの指定はなし。
FDの変更点はRDに比べるとマイナーで、主なものは以下のとおり。
①コレオグラフィックエレメンツのChoreographic Character Step Sequence (ChSt)のパターンが増えて、これまではShort Axis(ジャッジ席正面からリンクの反対側までの短い軸)一択だったのが、Long Axis(リンクを左右に突っ切る長い軸、Midlineとどう違うのか?)、Diagonal、Circularが加わり計4つのパターンから選択できる。ただし、レベルありのステップシークエンス(Style B)とは異なるパターンを選択すること。
②コレオグラフィックエレメンツに新しくChoreographic Hydroblading Movementが加わった。
(おしまい。)
コメント
コメント一覧 (4)
来季シルバーサンバが使われると決まったようですね。いつも詳しい解説を有難うございます!
年明けの2023年1月9日にエントリーされた記事、「Lake Placid 2023 FISU World University Games 情報」へ少しコメントしていたのですが、その時なつかしく観た、過去のコンパルソリー動画をよろしかったらどうぞ!
https://www.youtube.com/watch?v=9EKyAVbe9Qc
https://www.youtube.com/watch?v=X9x3Xf76NfI&t=4s
https://www.youtube.com/watch?v=jgYgJgHLJjM
(1996年、カナダ・エドモンドの世選かな。この3組がメダリストでした。フェンスに並ぶスポンサーの顔ぶれも なつかしいですねw)
kaorumikeko
がしました